吸って、舐めて、そして照らして

20170317 光るちくび出会い編

 俺に関する噂。
 第三位、トライバルをいれている。尻とアソコにも刺青がある。
 第二位、日常的に女性ものの下着をつけている。あるいはそれに準ずる趣味がある。
 第一位、乳首に絆創膏をつけている。

「お話し中すみません。三野主任、お電話です」
「おっ了解、つないで」
 はい三野です。電話の相手は案の定、さっき会った契約先の部長さんだ。
 三十の大台に乗って早二年。ほどほどに真面目に働いてきた。ほどよく昇進もしてるし、まあまあ安定した生活もできてる。ほどほどに残業もするし、若干ボケてるところもあってそこが玉に瑕らしいけど、まあまあ引っ張りだこ、らしい。なんの話かはあんまり知りたくない。
 まわりから結婚しないの、なんて訊かれるけれど、次男だし、まあ急がなくてもいいかな、なんて周りに言って回ってもう何年たつかも考えたくない。けど、未婚。結婚する気は、ない。
 まずゲイだ。今でこそ東京なら籍を一緒にできるらしいけれど、うちみたいな体質の古い会社ではまず公表できない。……お互いの負担が大きい。いろいろうるさい。よって無理。
 結婚しないせいで結構周りにはいろいろ言われるけど、いや言われないけど、色眼鏡で見られている自覚はあるし、妙な噂が横行してるもの知ってる。でも結婚はできないし、彼氏もいない。というより、この年ではもうモテない。見た目はまだましなほうかもしれないけれど、……ここまで筋肉量の多いネコはモテない。
 一時期――学生時代、ジムに通うのが趣味だったこともあって、今でも筋肉は多めだ。かなりがっしりしている自覚はある。吊るしのスーツだと、肩が結構ぴつぱつになるのだ。あと胸まわりも厳しい。だからといってオーダーなんて贅沢はできないし、ワンサイズ大きいものを買うぐらいしかいつも対処できない。そうなるとおしゃれなスーツも買えず、細く見えるスーツとか今どきのいい感じのスーツを着ている同期は結構うらやましかった時期もあった。
 そんなやつがネコだ。よりにもよってネコ。正直掘られたい。そろそろ掘られたい。卒業してから入社するまでの春休みに初めて行ったゲイオンリーのクラブで、ちらりと見かけていいな、と思って声をかけた男から「悪いけどガチムチ系のネコ、興味ないんだよね。気持ち悪い」と言われて以来意気消沈して遠ざかって今に至る。おまけにあの日はバニーナイトだった。勇気を出して網タイツにバニーイヤーをつけたものだから余計ショックだった。似合っていないのはわかっていても散々言われて死にたい気持ちになった。以来あの界隈には近寄れもしない。
 ゲイの友人はいるけれども、揃いも揃ってネコばかりだ。居酒屋をやってるタチの友人は身持ちもかたくてパートナー付きだし、他のタチを見てもワンナイトスタンドをするには少し勇気が足りない。――いや、少し違うかもしれない。自分にはひとと違うところがある。誰にもまだ話したことのない秘密。あのバニーナイトの夜から、人前で服を脱ぐことができない。会社の慰安旅行や家族での温泉旅行で、どれだけ気をつかったかしれない。刺青があるだのなんだのと噂されているが、自分が人に肌を見せることができないのは、そんなくだらなくてアホみたいな理由からではない。もっと深刻かつアホらしい理由があるのだ。

 俺のコンプレックス。
 第三位、恋人が生まれてこのかたいたことがない。ワンナイトもセクフレもない童貞処女。
 第二位、ペニスが小さい。一応バリネコのつもりだから割り切ってる、つもり。
 第一位、乳首が光る。残念なことに、乳輪ごと。

       ◆

 会社から家に帰る電車を数駅乗り過ごし、行きつけの居酒屋。ゲイとカムアウトしてみれば客も従業員もゲイまみれ、という居酒屋で、友人と管を巻くのが花金の定石だ。
 ゴン、といつものカウンターテーブルにジョッキをたたきつける。くちにひげをつけながら、いつもの台詞を口にする。
「別に、今更もう抱かれたいとか思わねえよ」
「出ましたイクミちゃんの『ほんとは抱かれたいんだからね』!」
「やかましい!!! 適当な翻訳つけるな!」
 周りがやんややんやと煽ってからかう。隣に座るレオが、ねえ、ときれいに塗ったリップをこちらに向ける。レオは昔から化粧をしたいタイプのネコだ。
「あんた昔バニーちゃんやったことあるんでしょお、それやってくれたら抱いてあげちゃえるのにー、アタシ、リバできるし」
「んなもんこの年でできるか! 恥ずかしい」
「そんなことないわよお、レオ聞いたもん、こないだミズキちゃんがカレシに頼み込まれてハイレグプレイやったって。イクミちゃんだって絶対似合うわよお」
「ミズキは顔がかわいくて線も細いからできるんだろうが。俺みたいな中年の筋肉はもう着れねえよ」
「なに言っちゃってんの、今はいろんな需要があるのよ?」
「相手に需要があっても俺の需要がねえからやらねえぞ」
 何気に言い口がひどいのはもうお互い様だ。セフレばかりでやっていける年でもなければ、ワンナイトスタンドだからと無理がきく年でもない。まだ大丈夫、まだ大丈夫とお互い言い聞かせているうちに手遅れになるところまで来てしまったのだ。この業界には、案外俺のような人間は多い。童貞処女こそ少ないが。
「まあ需要供給なんて言っちゃったらもう終わんないわよ。でもねイクミちゃん、この間アタシあんたのこと訊かれたわよ」
 よっ色男、ときれいに薄い桃色が塗られた爪で頬をつつかれる。バールビーズがのっていて、そのふちを少し濃いベージュが縁取っている。いつもレオは品がよくてかわいい。
「あんたって、俺?」
「んま、イクミちゃんに話しかけておいてイクミちゃん以外にいないでしょお?」
「いつだよ、この間って。しばらく俺ここに来てなかっただろ。ていうか誰に」
 花金はいつも来るのだが、ここしばらくは仕事が忙しくて顔を出せていなかったのだ。ほら興味あるんじゃない、とレオににやにやされてもなんとなく悪い気がしない。いい魚を逃がしたんだろうなと思いつつ、いつだよ、と急かして聞き出そうとする。
「先月よ。ほら、メンズアイドルナイトに行くんだけど、って誘った日あったじゃない。めずらしくとっとと帰っちゃった日よ。あのあとニューフェイスが来てね、入り口で入れ違ったイクミちゃんのことタイプだって言ってたわよお」
 思い出したかしら、いい感じだったでしょ、と目を輝かせる。言われて反芻するが、なんとなく覚えてはいるもののうろ覚えだ。
「……ああ、あの、……おい待て、未成年みたいな顔じゃなかったか」
「もう二十三だって」
「十も違うじゃねえか……」
 いくらなんでも、と頭を抱える。老け専枯れ専は結構なことだが、そんなガキみたいな相手とやりあうのはさすがに気が引ける。
「だいいち結構かわいい系だっただろ。ミズキ寄りだったじゃねえか、どうせ俺のことタチだと思って」
「そうそう、それがねえ、あの子タチだと思い込んでたんだけど、『押し倒してお慕いしたいタイプだ』って言ってたわよ?」
「押した……お慕……襲い受けか? 姫受けか?」
 若い奴の考えることはわからん、と眉を寄せる。やだ違うわよ、と否定したのはレオだった。ピーチウーロンを一口含んでから、レオは満面の笑みで言い放った。
「ネコとしてタイプだってことよ」
 ジョッキの汗が急に冷たく感じた。アルコールの回った自分のからだも、いくらか冷えた気がした。
「金曜日に遊びに来ることが多いわよって言っておいたから、もしかしたら今週も来るかもよ」
 この店は引き戸式だ。ごろごろごろ、と背後でまた一人客が入ってくる音がする。
「も、ってまさか」
「ご明察ー、先週も先々週も来たのよお、あの子」
 ほらあれ見て、かわいいわあ。レオの指さす方をゆっくりと振り返った。
 こちらを凝視して、百年の恋の相手を見つけたかのような表情を浮かべた少年が、そこにいた。

「ハルカくんはなに飲む? 生でもいっとくかしら?」
 ほら見せてやんなさいよ、とメニュー表をせっつかれる。言われるままにレオからハルカへとメニュー表を橋渡しする。いつものカウンター席のはずなのに、なんとなく居心地が悪い。レオとハルカに挟まれて、居心地の悪さをかみしめる。
「いえ、えっと、カシスオレンジで。それとなんこつのからあげとちくわのしそチーズ巻きを」
 ハルカ、二十三歳。夜食になにか、とたまたま見つけたこの居酒屋で、俺とすれ違ったのだという。はじめましてハルカです、という声が少し震えていて、ああ、なにか芸能人に会ったファンの反応みたいだな、と思いながらはじめましてと言葉を返した。
 初めて入った際、どうも男の客が多いなと思い始め、居酒屋だし、と言い聞かせているうちに、席ひとつあけて座っていたレオがゲイのイベントの話をし始めて気付いたらしい。よもや吸い寄せられるように運命的に入ったその店で、ゲイだと打ち明けるのにそうかからず、さらに入れ違うようにして出て行ったガタイのいい男がとてもタイプだったという話にたどり着くまではさらにかからなかったという。
「とりあえず乾杯ね。かんぱーい」
 ハルカに酒が届いて、レオが俺をまたいでカチンとグラスを交わす。
 ハルカはとても幼いように見えた。年齢を考えても学生上がりで、知らない居酒屋に入ってゲイだと公言できるほどに無鉄砲で、自由だった。うらやましいと思う反面、彼がネコではないという事実に驚かされる。これを言ったら偏見だと怒られるのかもしれないが、正直これでアナルが純潔なのかと思うと下世話にもどれだけ屈強に守ってきたのかと思ってしまう。べつにタチだからといって処女だというわけでもないだろうが。
 そう思ってしまうほどには線が細い。俺が触れたら折れそうなほど。
「うわーもう飲み方が若いわあ、ねえそう思わないイクミちゃん」
「そうだな」
 二人して焼酎に切り替えて、渋り切った顔でつやつやの少年を見やる。
 レオはため息をつくような顔で小鳥の一挙手一投足を見つめる。性的対象というよりも母性が芽生えそうな雰囲気だ。
「ハルカ」
 ハルカがしそ巻きにかぶりつくのを目でとらえて、声をかける。んう、としそ巻きを咥えたままの顔がこちらを見る。少し見開いた丸い瞳、弧を描く眉……まるで子どもだ。
「……咥えっぱなしは行儀悪いぞ。かじったらすぐ離せ」
「んぐぐ、……ふぁい」
 怒られたのが恥ずかしかったのか、はたまた変な顔を見られたのが恥ずかしかったのか。顔に赤みがさしていて、――可愛いと思いこそすれ。
「これもうまいぞ。食べるか」
 差し出したのは今しがた自分が頼んで食べかけようとしていたカキフライだ。ついでにサラダかなんかも頼むか、とメニュー表を開く。
「ハルカ、大根サラダ食えるか」
「え、えっと、大根はその、好き、なんですけど、水菜がだめで」
「じゃあ水菜は食ってやるよ。それと刺身の盛り合わせでもいっとくか」
 注文を、と手を上げる。注文を終えてから、すみません、と横で恐縮してしまうのを、いいよ、と微笑んでやる。
 するとレオに横腹をつつかれる。なんだ、と振り返ると、にやついているのかと思いきや渋い顔でこちらをねめつけていた。おまけに小声で文句をつけてくる。
「ちょっとイクミちゃん、まるで子ども扱いじゃなあい。好きだって言ってくれてる子になんて仕打ちよお」
「別にまだそんなこと言われてないだろうが。なんとなく世話焼きたくなるんだよ」
「……それあんまりいい傾向じゃないような気がするんだけど」
「知るか」
 焼酎を一口含み、正面に視線を戻す。厨房内では友人がバイトらと忙しなくあれやこれやと作っている。あのぐらいタッパがあって筋肉がもう少しあったら、と中肉なタチの友人を見て思う。店だから当然とはいえ料理もうまいし、……いいな、と思っていた時期がなかったわけではない。もちろんあれにはもう長いこと連れ添っているパートナーがいるし、こちらもそんなに本気だったわけじゃない。
「あの、イクミさん」
 ん、と声のほうに視線をやる。少しかたい表情で、探りを入れるような。
「イクミさんも、その、ゲイなんですか」
「……まあ、そうかな」
 箸を置けないまま、迷い箸をして気を紛らわせる。こういう訊かれ方は、あまりにもくすぐったい。
「べつにゲイだからどうってこともないよ」
 なんこつのからあげをひとつ拝借して口に放り込む。レモンが口の中にじんわり染みる。
「俺はネコなんだけどさ、ハルカもネコなのか?」
 するとぱっと顔を輝かせて、しかし言葉口は相変わらず少し迷い気味だ。
「い、いえ、その、あの、……タチ、のほうなんですけど」
「ふうん。タイプは? 俺、結構ネコの友達多いから紹介できるかもよ」
 するとハルカは黙ってしまった。――ずるいことをしたかもしれない、と不慣れそうな様子を見て思う。
「……その、自分よりもからだの大きい人が好きで、少しだけ日焼けしてて、筋肉質で」
「マニアックだな」
「かわいい系よりもかっこいいほうが好きです」
 首筋まで赤くして、ハルカは言い切る。
「かっこいいやつか。難しいな」
 難しくなんてないでしょうよアンタに決まってんじゃない、と横でレオが口を挟むが押さえ込んで無視する。
「あ、あの」
 大声をおさえたような声が脳髄に響く。くりくりとした瞳の視界が下に落ちていくのを見た。
「……イクミさん、……みたいな人が、好きです」
 口の中の大根サラダのシャキシャキ音が止まる。とにかくそれを飲み込んで、それから言葉をのせた。
「……俺とじゃあ、年の差がありすぎるぞ」
「年の差を気にしたら恋はできないと思います」
「…………言ってくれるね」
 はー、とため息をつくのは俺だ。なんて否定したら、この子は。
「僕はイクミさんが好きなんだと思います。……イクミさんは、僕はタイプじゃないですか」
 ……少なくともタイプではない、と思った。自分と同等かそれ以上に筋肉質で、押しつぶされて反抗できないほど力の強そうな男が俺のタイプだ。少なくともそういうセックスにあこがれがある。征服されたい。
 でもハルカは見てのとおり線も細いし、恐れながら触れてくるタイプだ。おまけに押し倒されてもすぐひっくり返せそう――なんて言ったら怒られるだろうが。
「……そうだね、タイプではないかな」
 処女妖精にセックスの好みなんかあるかとも思うが、ひとまずそんな返しをする。残酷だろうか。横でレオがうなだれている。ハルカが振られたほうにうなだれているのか、処女妖精がまた脱処女を逃したのにうなだれているのか。
「……でも、まだ会って何時間もたってませんから、まだこれから先はどうかわかりませんよね」
「……それは、……どうだろうね」
「僕、頑張りますから」
 なにを頑張るというのか――とは訊けず、そう、とだけ返して、焼酎をあおった。

       ◆

「ちょっとイクミちゃん? 起きなさいよ」
 閉店間際、午前一時。結構飲む人なんだなあと思っていたが、そう思っているうちにイクミさんはうつらうつらして、そして寝入ってしまった。
「普段もこうして寝てしまうんですか? 前は歩いて帰ってましたよね」
「いつもはこんなに飲まないのよ。まあ、たまに寝ちゃうことはあるんだけど……多分仕事かな」
「お忙しいんですか」
「そうねえ、しばらく来てなかったのも仕事が立て込んでるからって聞いてたし。やっとおととい落ち着いたんですって」
「そうなんですか……」
 ぐう、ぐう、といびきをかくイクミさんの髪に静かに触れた。耳まで指を滑らせて、耳たぶをやわく揉んだ。アルコールの熱が耳たぶを温めている。
「もう終電もないし、弱ったわねえ。イクミちゃんの家、ここから歩くにはちょっと遠いのよねえ……いつもなら寝ちゃっても起こせばすっきり起きてくれるんだけど」
 はー、とレオさんがため息をつく。弱ったわね、と小声でつぶやくレオさんが、どこか母親のように見えた。そうやってしばらく考えてから、諦めたように立ち上がる。
「こうなったらもう自己責任よねえ。この中でイクミちゃんの一晩を買ってくれる人いなーい? 持ち帰りの際の飲酒運転はなしで!」
 店内に残っていた三人ほどが笑い声を上げる。
「レオちゃん、オークションはまずいでしょ」
 カウンターの向こうから洗い物中の店長さんが声をかけた。しかしその顔も笑っている。
「いいわよ別に。寝るほうが悪いでしょ」
 すると残っていたうちのひとりが歩みを向けてきた。
「うちでもらって帰ろうか? 朝起きたらどうなってるか保証はできないけど」
「やだもーケンちゃん、よろしくお願いしちゃう! 持ち前のデカマラでケツ穴開発してやって」
「勘弁してくれ、そんなに立派な代物じゃないよ。それに寝てるやつにナマモノは突っ込めないし……ビーズと指でならできるかな」
 ケンさんは微笑みながら手をかけて、イクミさんの脇をすくい上げようとする。――僕のイクミさんが。
 待って、と声が出たのに、一瞬自分も気付かなかった。
「うん?」
 ケンさんが振り返った。どうしたの、と顔が尋ねている。
「あ、あの、……僕の家がすぐそこなので、あの、……僕が連れて帰らせてもらっても、いいですか」
 するとあっさりとケンさんはイクミさんから手を離した。
「そう? じゃあまたの機会にしようかな……重いけど連れて帰れる? 付き添おうか」
「いえ、大丈夫です! 連れて帰れます」
 奪うようにイクミさんの脇を取った。するりと指の触れたイクミさんの筋肉は、無防備にやわらかくなっていた。

       ◆

 なんとか歩ける程度にイクミちゃんを覚醒させ、よたよたと歩いていくふたりを見送りながら、アタシは口を開く。
「ありがとうねえケンちゃん」
「いや、かまわないよ。ほんとは好意向けられてうれしいのになんとなく素直になれない感じのイクミくんはおもしろかったね」
「初めて好意向けられて、でも年下だし、押し倒される対象としてみたことのないタイプだったからどうしたらいいかわからなかったのよ。あーはらはらしたあ」
 はあ、と詰めていた息をほどくと、ケンちゃんも苦笑いをこぼす。
「ハルカくんにはいろいろと悪いことしたけどね。でもイクミくんがいつまでも独り身だし遊ぶ雰囲気もないし、ちょっと心配だったんだよね」
「なんかいろいろ抱え込んでるみたいなんだけど、発散できずにどん詰まりして、イライラを仕事にぶつけるもののひとを怒鳴りつけられないタイプだからねえ……どこにも持っていけないものを仕事する時間に引き換えて忘れようとして……ワーカホリックすぎていつか線路に飛び込んで死ぬんじゃないかと思ってたもの」
「レオくんなりに心配だったんだろう?」
「そうよお。情がないわけじゃないもの」
「そうだね。いつもなにかをあきらめたみたいなことばかり言ってたのが、なくなるといいね」
「……イクミちゃんのあれを見るのは毎度つらいのよ。アタシも」
 愚痴だったらいくらでも聞いてあげるのにね。するとケンちゃんはふふ、と小さく笑った。
「嘘ばっかりだね。もう何年聞いてあげてたの。店の常連はみんな知ってるよ」
「……もうやだケンちゃんったら。アタシのこと口説いてもお尻は貸さないわよ?」
 あはは、とレオはケンの肩を叩いた。
「イクミくんもまとまりそうだし、レオくんもパートナー決めたらいいのに」
「そんなこと言ってえ。あと五年は遊ぶって決めてるんだから」
「遊び終わったらぼくのこともよろしくね。遊びの範疇には入れてほしくないからくれぐれも遊び終わってからね」
「ケンちゃんたらいつもそんなことばっかり」
 適当に聞き流してほどほどに返事をする。ケンちゃんとはいつもこうだ。
 店から離れて、タクシーの拾える駅のほうへ向かう。あれ、とケンちゃんが口を開いたのは、店だいぶ離れたころだった。
「そういえばハルカくんって、イクミくんが処女なことは知ってるの?」
「…………あっ」

       ◆

 がちゃん、と部屋の鍵を開ける。
「イクミさん、イクミさんつきましたよ」
「うー……」
 うめき声しか聞こえないイクミさんを、玄関でおろす。担いでいた肩が少しこわばって痛い。
 ころんと上がりかまちに転がすと、思いのほか素直に寝転がる。体が動くだけで意識がほとんど覚醒していないのか、小さく歯ぎしりしている。
 しゃがんで、イクミさんの靴を脱がせる。紐をゆるめ、すこ、と音を立てながら靴をもいでしまう。いい靴を履いているのか、それとも大事にしている靴なのか、中敷きも靴底も綺麗だった。履きつぶすのを恐れるような。
 自分も靴を脱いで、いい加減持ち上げられず、両脇を持って引きずった。――まるで死体を運んでいる気分だった。運んだことはないけれど、罪悪感と、後ろめたさと、焦りの混じったこの気持ちは罪を犯している気持ちと近いような気がする。
 ぱち、と電気をつけると、蛍光灯が少し薄暗くぼんやりと光をともす。ワンルームの賃貸アパート。キッチンも小さく、部屋のど真ん中にテーブルと布団を並べる、普段は寝に帰るだけの部屋。住んで一年も経つのに、なんとなくいつもと違うように感じた。アダルトビデオの、セットの一室のような。
「イクミさん」
 八畳ほどの部屋に、声がこだました。イクミさんはよほど疲れて酔いが回っているのか返事すら聞こえない。布団までさらに引きずっていって、万年床のような敷布団の絵にのせてしまう。……どこかのドラマみたいに、お姫さまだっこはできない。
 身長の目線からイクミさんを見下ろす。ゆるめられたネクタイ、居眠りでしわの寄ったジャケット、禁欲的な黒いベルトにスラックス、親指のあたりが少し薄くなった黒の靴下。彼を守るものはそれしかない。
「イクミさん」
 本名も知らない、どこに住んでいるのかも、職業はなんなのか、なにが趣味で、休日はなにをして遊ぶのかも知らない、ただ金曜日の飲み屋で出会ったひと。
 ワンナイトスタンドとはこういうのを言うんだろうか。ワンナイトスタンド。この気持ちはワンナイトで終わるんだろうか。なにより相手の同意は取れていないのに。
「……イクミさん」
 意識がないまま、無防備に眠っている。この部屋で。
 ひとめで見てこのひとがほしいと思った。ひと晩でいいからこのひとのからだに、こころに触れたいと思った。このひとの熱を知って、自分の熱をうつして、このひとの筋肉に顔をうずめたいと思った。
 まな板の上の鯉、皿の上のオムレツ、布団の上のイクミさん。
 しゃがんで、膝をつく。乗り出すように手を伸ばして、頬をゆっくり撫でた。丁寧に剃られているひげが少し指に触る。頬は少しかたい。親指に小さく鼻息がかかる。
 まつげが長いなと思った。顔も整っているし、こんなひとが今フリーなのが驚きだった。彼氏が途切れなさそうなのに。心の隅でちらと運がよかったと考えてしまう。
 頬から首筋に指を添わせる。んん、とくすぐったそうにイクミさんが首をすくめた。ゆるいネクタイを静かにほどいて、シャツのボタンをふたつ外した。鎖骨をなぞって、胸筋へ這わせる。首筋に鼻をすり寄せて、すん、とにおいを吸い込んだ。少しの汗くささと、酒のにおい。いっぱいに吸い込んで堪能する。最高に性的なにおい。
 シャツの隙間へ差し入れた指先に、乳首があた――るはずだったが、シールのようなものが触れた。ん、とうめき声が聞こえる。
 いったん手を襟元から抜いて、ボタンをさらにふたつ外した。神々しいものを恐る恐るカーテンの隙間からのぞき見るようにすると、筋肉質に膨れた胸筋の下部にガーゼが貼られていた。けがをしたように、医療用の紙テープで井の字に。しかも両方の胸の乳首の位置にあるのを見て、そんなに敏感なのか、まさかピアス、と考えてしまう。
 すうすうと寝息を立てるイクミさんは小さく眉を寄せている。これをはがしたら目覚めてしまうだろうか。好奇心が勝って、誘惑のままにテープに爪をかける。
 ぺり、と角をはがして、慎重にめくる。いびきの隙間にイクミさんが、ん、と喘ぎに似た寝言を漏らした。
 そこからのぞいた乳首は、妙に桃色だった。三十代にしてはうつくしい、つついて、撫でて、舐めたくなるような。
 その胸に手をかざして触れようとしたとき、変なことに気が付いた。微妙に発光している気がする。気のせいか。手のひらの影の中で、ぼんやりと桃色に光っている気がする。両手で光から隠すように覆うと、やっぱり乳輪ごと乳首が光っていた。ぼんやりとはっきりの狭間で光っている。
 乳首が光るなんて聞いたことがなかった。人体が光るなんて。
 なにかを塗っているのだろうか、でも塗ったのならガーゼにもついているはずだろう、とその乳首に顔を近づける。舌を伸ばした。鼻孔をくすぐる肌のにおいがボルテージを上げていく。
 ぺろりと舐めてみたが、乳首の味しかしなかった。少しのしょっぱさと、ぬくもりだけ。なんとなく我慢できなくなって、乳首を咥えた。舐めるにつれて凝り固まってくるその乳頭が、どこかジェリービーンズのようで、ずっと舐め続けていたくなる。
「ん、んん……んぇ……え、だ、誰……ハルカ?」
 頭上から声が聞こえた。口からキャンディを離さないまま、目線だけをやると、半分寝ぼけまなこな瞳があった。れろりとキャンディを舐めてやると、う、とうめいた。
「あんっ……え、ハル……ハルカ?!」
 どこ舐めて、と口を挟まれる前に、思いきり乳首を吸い上げた。脳髄にくるような声とともに、イクミさんの腰が揺れた。
「なにして、あ……やめ」
「いやです。こんなかわいい乳首ほったらかしてなんて」
 いままでどれだけの男がこの乳首を舐めてきたのか。イクミさんの下半身などほったらかしでとにかくそこを舐め続ける。
 しかしそこではたと気付いたらしい。イクミさんは咥えられている顔を押しのけた。上体を起こして胸を隠すように腕で盾をつくる。
「あ、……みた、のか」
 氷みたいに固まっているその声を聞きたいんではなかった。さっきのような熱に泳ぐような声が、もう一度聞きたい。
「見ました」
「なんではがしたんだ」
「……はがした?」
 貼ってあっただろ、とイクミさんが言うので、ああ、と思い至る。
「隠されると見たくなる法則です」
「どういう意味だよ」
 どうもこうもない、と肉厚な胸板に手のひらを置いたまま、そのぼんやりと光る胸元にもう一度目をやる。
「普段からずっと、なんですか」
「……普段はもっと弱い。飯食ったら光る。でも今日は酒飲んだからあんま光は強くない」
「すごい……酔ったら勃たないなんて……まるっきり性器……」
 瞬時にばかたれ、とどやされる。怒られてもなにもこわくない。アドレナリンが爆発して心臓がうるさい。
「ていうかなんで勝手に服めくってんだよ。……おい、ここどこだ」
「僕の部屋です。……居酒屋であんなに無防備に寝ていらっしゃったので、僕が持ち帰らせてもらいました」
 言いながら乳首を親指で擦り込むようにすると、う、とイクミさんは眉をひそめた。
「やめろハルカ、触るな……ンァ」
 すりつぶすように何度も触れると、桃色の輝きが増していくように見えた。
「すごい、触るたびにピンク色が強くなる……」
「んなわけあっか…っ」
 ピンクが赤へとイルミネートしてゆくのを間近にとらえる。時折びくびくと波打ってはこわばるその胸から聞こえる心音を、心地よく手のひらに感じていた。

       ◆

 目が覚めた時には、カーテン越しにまぶしい日差しが差し込んでいた。見覚えのないグリーンのカーテン。
「……」
 頭だけ起こして首から下を見やる。着衣がなにもないうえに、全身に小さな赤黒い斑点。少しのべたつきに、切れかけの電球か燃料切れ寸前のろうそくみたいに薄く光る乳首。一瞬ものごとを考える力が消えうせたが、昨夜の記憶はまざまざと思い出された。
 今も光るその乳首を、散々つねられなぶられしたあとで、あらぬところを前も後ろもしゃぶられて、全部飲み込まれて、体格に見合ったサイズのいちもつをいままで破られたことのなかったアナルに――――やめよう。忘れよう。アラサーもいいところのおっさんが、若い子と一夜のアバンチュール。目覚めて一発目にハルカの顔が淡い桃色に照らされていてびっくりしたけれども、いい思い出になったじゃないか。若い子にあんなに元気に腰を振ってもらえる機会なんてそうない。
 いやーいい一夜だった、と上体を起こす。隣にはもうぬくもりはなかった。きれいにたたまれた隣の布団を見ながら、自分のを見やる。無残にも足元に蹴飛ばされてしまっていて、――ああ、この年になっても処女は捨てられるんだなと思った。
 クローゼットにかけられたスーツを見て、胸が震えた。まっさらで、若いデザイン。ああ、帰ろう、と思った。あまりにも異質な自分が、みじめだった。
 みじめだった。この年まで経験のないおじさんを抱いて、彼はなにがしたかったのだろう。たった一度居酒屋で見かけただけの、さえない男に。
 ……いや、違う。なにがしたかったわけでもないのだ。

 目の前が潤んだ。そして落ちた。生きているうちに一度だけでいいから、誰かに抱かれたいと思っていた。激しく犯されたいと思っていた。誰でもいいからこの隙間を埋めてほしいと思っていた。からだに秘密をもっていることをひどくコンプレックスに思っていた。もしかしたらハルカは埋めてくれるのかもしれなかった。
 夢のような心地だった。ハルカのことが好きかと訊かれたわからない。これまでなんの経験もなかった擦り込みのように、初めて好意を示してくれて、抱かれて、吊り橋効果のように好きになりかけている気がした。あまりにも危険だった。
 もとより乳首がイルミネーションのような男をよく抱いてくれたなと思う。
 夢のような心地だった。文字通り、夢のような。

 股の間を適当にティッシュで拭う。ローションを多めに使われたせいか、それともハルカがうまかったのか、ひりつきはあれど痛みはなかった。肌が少々べたつくのをおして、そのまま上からシャツとスーツを羽織った。いじられすぎたせいか、乳首は赤く光っていた。いつもより余計に光っている気がして、ガーゼを貼り直す。
 家主はいないようだった。かばんを拾って、財布を確認した。実践したことはなかったけれど、話ばかり聞いて耳が肥えた。こういうのはラブホでひと晩なら三万から五万が相場だ。
 ホテル代とひと晩の享楽に平均二万から三万、楽しかったらもろもろの経費に上乗せしてチップを一万から二万。楽しかったかと訊かれると難しいところだが、十も年上の筋肉質な処女妖精を抱いてくれているのだから少々上乗せしておいた方がいい。
 とは思ったものの、残念ながら手持ちが三万五千しかなかったので――あの居酒屋で過ごす日はいつもおまじないのように普段より多めに現金を持っているが、いざというと足りない程度の金額だと気づく――、三万だけ抜き取ってテーブルに置く。
 からだの奥がまだうずいているような気がした。一度抱かれたら諦めがつくはずだった。際限なくねだるような、みっともない考えはしたくなかったのに。
 袖をぴしりと揃えてから、玄関に立つ。玄関カウンターに、無造作に鍵が置かれていた。無防備に、悪用されても知らねえぞと思いながらその鍵を取る。鍵を閉めてすぐドアポストに入れておけば、返す手間が省ける。顔を合わせなくて済む。
 からだの相性だとか、そういうのは詳しくないけれど、よかった、と思う。十分楽しかったし、向こうもそれなりに楽しんでくれていた、と思う。多分自分も楽しんだ、と思う。
 後ろ髪を引かれすぎているな、そんな自覚がよぎった。玄関のドアに指をかけようとしたすきにそんなことを考えたのがいけなかったのか、ノブがひとりでに動いた。
「え、イクミさん?」
 ドアを開けたのはほかでもない家主だった。ひゅう、と風がひとつ吹いて、熱のこもった部屋を冷やす。
「起きたんですね。朝ごはんを買ってきたんですけど」
 大手コンビニのレジ袋を持ち上げて示すが、靴まで履いているのを見やってからハルカは話題を変える。
「もしかして帰るつもりでした?」
「ああ、……昨晩は……すまなかった。みっともないところを見せた」
「そんなことは」
 役得です、とハルカは微笑んだ。
「それより、……帰っちゃうんですか」
「ああ、……飯、買ってくれたのに悪いんだが」
「いえ、それは構わないです。……もう少し、ゆっくりしていきませんか?」
「……実は今日は休日出勤なんだ。昼からなんだけど……だから、帰るよ」
 嘘をついた。仕事なんかなかった。嘘でもつかなければ、ここを離れられなくなる気がした。
「そうですか。じゃあ」
「ああ」
 名残惜しい顔を隠して、その場を離れる。階段を下りて、アスファルトを踏む。また風が吹いた。熱が奪われていく。
 知らない道で、どうすれば帰れるかわからなかったが、適当にさ迷い歩きたい気分だった。楽しかった。楽しかったのには違いはないのだ。ただ、少しむなしくなっただけで。
 どうにかなりそうな気分だった。いろんな考えが自分を引き留めている。ずっと誰かに抱かれたかった。はじめて抱かれた。はじめて抱いてもらった。気持ちよかった。でもそれが擬似的な愛だと気付いたとき、自分はもっと幼い欲求に振り回されていたことにも気付いた。
 しばらくあてもなく歩いて、ひとけのない道を、後ろからランニングしてくる足音が聞こえて、歩道の端に寄った。また鍛えようかなとふと思った。トレーニングしている間はなにも考えなくて済む。過去のトラウマに振り回されることも、全部忘れられる。なんとなく胸が痛いような気がした。
 ふいに背中になにかがぶつかった。前につんのめりそうになって、思いがけず立ち止まった。なんだ、と思う暇もなく、二本の腕が巻き付いてきた。白くてきれいな、さっきまでコンビニの袋を持っていた手だ、と思った。その右手に、覚えのある紙幣が握られていた。
「……おかねなんて、い、いりません」
 背中に言葉とともに熱い息がかかる。走ってきたせいか、ぐうと重くもたれかかってくる。
「こんなの、いりません。勝手に連れ帰って、勝手に手を出して、見られたくなかったはずのものを勝手に見て、合意もないのに抱いたんです。反省して、連絡先を訊くのも、好きですって言うのも、次に会った時にしようって思ったのに」
 僕が欲しいのは、イクミさんなのに。か細い声でそう聞こえて、からだがこわばった。
「口止め料なんていりません。秘密にしてたものを、ひとに言いふらしたりしません。だから、これは返します。僕が欲しいのはイクミさんです」

 誰かに深く愛されたい。自分を大切にしてくれる、家族みたいにそばにいてくれる人がほしかった。この年にもなって処女妖精引きずってて、童貞で、乳首が光ることを隠さなくてもいい、全部まるっと抱きしめてくれる存在がほしかった。

「……会ったばかりで、一度抱いただけの、俺のなにが……」
 そんなに、と続けようとして、やめようと思った。たった一回会っただけの男に惹かれて誘って、振られたのをトラウマに乳首を光らせてまで引きずっている男もいる。
「ハルカ、すまん、俺が悪かった」
「……」
「今まで恋人もいなかったし、その、セックスしたこともなくて、ちょっとひねてたんだ」
「……ん?」
「俺みたいなのを抱いてくれるやつがいるなんて思わなかったから、この年になって抱かれて、なんか裏があるんじゃないかとか、まあつまり信用してなかった」
「えっ、イクミさん」
「レオからハルカが俺に気があるらしいとか聞いてたんだが、あんまりそれも信用してなかった。ゲイのおっさんの童貞処女を珍しがってんだろうなと思って。なにより乳首見られて、昨日は酔った勢いで抱けたけど二度は無理とか言われたりされて平気でいられるほど俺もメンタル強くないんでな、金置いてワンナイトで済ませればいいかとかな」
 なんとなく気が抜けてぺらぺらと喋っていたが、そのうちに体に巻き付いていた腕がわなわなと震えているのに気付いた。
「どうした、……寒いか、部屋に帰った方がいいんじゃないか、……ハルカ?」
「イクミさん、……イクミさんそれほんと?」
「それ? どれだ」
「イクミさん、ぼ、僕が初めてなの?」
 え、と思いながら後ろをぐいと見やると、さっきまであんなにひ弱だった声も想像がつかないくらい目をきらきらに輝かせたハルカがいた。

       ◆

 俺に関する噂。
 第三位、最近になって恋人ができた。相手は年下で、ラブラブらしい。
 第二位、日常的に女性ものの下着をつけている。恋人の趣味らしい。
 第一位、乳首にガーゼをつけている。理由は敏感すぎるからで、恋人の言いつけらしい。

 俺の自慢。
 第三位、処女喪失した。童貞のほうはまだだが、ネコだし気にしてない。
 第二位、ペニスが小さい。でも恋人は舐めやすいからむしろ好きとムスコにご執心だ。
 第一位、乳首が光る。部屋を暗くしても、恋人の顔がよく見えるから結果オーライ。

inserted by FC2 system