窓を叩くように、雨が降り始める。
こんな時は何となく焦燥を覚える。
向かう場所などないのに、どこかに行かなければならない感覚。
音もなく、部屋の扉が開く。
入口にたたずむ女の目に光はなく、何を考えているかわからない。
憎んでいるのか、俺を殺したいと思っているのかさえ。
女の手が震えている。
いい加減慣れろと思うが、頭のどこかで「慣れるはずがない」と冷静な声が響く。
部屋の中は暗闇の中でも窓際のベッドに近寄れる程度に整理されている。
「声を出すなよ」
女はこの部屋にいる時は、今まで一度も声を出したことがない。
俺はわざと確認するように呟く。
女はうなずくとベッドに体を横たえる。
そして俺はまたいつものように、服をむしり取るように脱がせにかかる。
―――俺はなぜこいつを抱くのか。
女の上で腰を打ちつけながら、思う。
最初はほんの気まぐれだったのではなかったか。
気まぐれならば、学校の同級生でも、バイト先の女性でも誰でもよかったはずだ。
いや、違う。
この女の何もかも、明るく映る光を奪いたい。
あの何も映さない、心が死んだような目を見たいのだ。
だから、俺は何度でもこの女を抱く。
俺と同じ場所に、蝶の痣を持つ女を。
「恋は落ちるものじゃなく、するものだ」
いつか読んだ本の中で、そんなフレーズが出てきた。
でも、これは恋じゃない。
一方的に俺が、あいつの中に少し残る熱を奪うだけ。
恋や愛など知らなくていい。
知ったら、俺もあいつもダメになる。
だから知らないことにする。
それでいいんだ。
注釈:このお話は砂原様のWEB「eye's cafe」(BOOKMARKに直通のバナーを設置させていただいています)には諸事情により掲載されておりませんので、ここでしか読めない仕様となっておりますうふふ。
まず藍さま、創作復帰おめでとうございます。更新を楽しみにしております…わたし以前よりFAKEの続きが気になっておりましてですね(後略)
ところで藍さんからこんなえろえろしたお話が飛んでくるなんてばあちゃん想像もしていなかったよ…震えちゃったよ…。
読んだときに本当に送信者が藍さんかって確かめちゃったよ…藍さんでした…。
どこに痣があるのかなーなんて考えたりね、どんな関係でどう出会ったのかなーとかね、そういうありきたりなことも考えるのだけど、思いのほか大人びた「俺」が学生だっていうのがなんだか不思議な気分になるのです。
これが奪い愛か(やめなさい)
声を出さない、なにも映さないというこの女性もまた光を奪われることを許すほどにはなにか想いがあるのだろうなとかですね。考えるのがとても幸せです。ほくほく。
藍さま、素敵なおはなしをありがとうございました(ふかぶか)。今後も仲良くしてやってくださいませ!